クリニックや歯科において、自動精算機の導入メリットは非常に大きいです。しかし、高額な導入費用など、デメリットとなる部分もあります。
今回の記事では自動精算機について詳しく解説し、メリット・デメリットをそれぞれ紹介しますので、導入する際の参考にしてください。
自動精算機とは?

自動精算機とは、精算から金銭の授受までの会計業務全般を行える機器です。類似システムに「セルフレジ」がありますが、セルフレジの場合、最低でもスタッフが一人必要になります。スタッフが会計をした後に、金銭の授受を自動釣銭機で行うのがセルフレジです。
自動精算機は、診察券を入れるだけで、患者の情報を読み取ることが可能です。会計金額が表示されたら、患者は現金またはクレジットカードで精算を行います。支払いが完了すると、領収書や明細書が発行され、会計完了です。
その他の自動レジ(セルフレジ)とどう違う?
ここでは、自動精算機とその他の自動レジとの違いを解説していきます。
基本的に、自動精算機は受付スタッフを必要とせず、患者自身で最初から最後まで会計を行うことが可能です。
自動精算機とその他の自動レジとの違いは以下の通りになります。
- セルフレジ(フルセルフレジ)
フルセルフレジは小売店などでよく使用される運用方法で、商品バーコードのスキャンから支払いまでを、すべて顧客自身が行います。 スタッフを必要としない点は自動精算機と同じです。しかし、フルセルフレジの場合は、一つひとつの商品バーコードをスキャンしなければならず、不慣れな方は会計に時間がかかる場合があります。
- セミセルフレジ
セミセルフレジは、クリニックや歯科でもよく運用されています。 受付スタッフがレセコンから出力されたバーコードを読み取り、患者へ金額を提示した後、患者が自動釣銭機に現金を投入し、精算を行うのがセミセルフレジです。セミセルフレジの場合は、必ず受付スタッフが必要になります。
- 券売機
券売機は飲食店などでよく使用されており、硬貨や紙幣を入れてボタンを押すと、注文したい商品の券が排出される仕組みです。 注文業務にスタッフを必要とせず、最近ではタッチパネル式の券売機も販売されています。
以下の表では、それぞれの自動レジの導入価格相場や各種システムとの連携の有無を表しているので、参考にしてください。
自動精算機 | セルフレジ | セミセルフレジ | 券売機 | |
---|---|---|---|---|
写真 | ![]() | ![]() | ![]() | ![]() |
導入価格相場 | 200万円~450万円 | 100万円~150万円 | 100万円~150万円 | 30万円~300万円 |
支払いの流れ | 診察券を自動精算機に投入する、もしくは 診察券のバーコードを読み込ませる 画面に表示された金額を確認する現金またはクレジットカードなどで支払いを行う領収書及び明細書を受け取る | 購入する商品のバーコードをひとつずつスキャンする 合計金額が表示されたら支払い方法の選択を行う 選択した支払方法で支払いを行うレシートを受け取る | 商品バーコードの読み込みはレジスタッフに行ってもらう 合計金額が表示された後、支払い方法を選択する 選択した支払方法で自動釣銭機を使用して支払いを行うレシートを受け取る | 購入したい商品の表示されている金額を券売機に投入する 購入したい商品のボタンを押す 排出された券を受け取る 飲食店の場合はそのまま券を持ち席に着く 注文した商品が運ばれてくるのを待つ |
電カル/レセ連携 | 基本出来る | メーカーによってはできる | メーカーによってはできる | できない |
帳票の保険種別出し分け | 基本出来る | メーカーによってはできる | メーカーによってはできる | できない |
呼び出しシステム連携 | メーカーによってはできる | できない | できない | できない |
再来受付連携 | メーカーによってはできる | できない | できない | できない |
オンライン資格確認連携 | メーカーによってはできる | できない | できない | できない |
会計以外の機能の充実度 | △会計周りとのシステム連携機能に特化している場合が多い。 | ◎在庫管理や顧客管理、ポイント管理など多岐にわたる機能を搭載 | ◎在庫管理や顧客管理、ポイント管理など多岐にわたる機能を搭載 | ×会計に特化している製品が中心 |
自動精算機は医療機関を中心に導入されているため、医療機関向けの機能が充実しています。
ただし、高機能な分、非常に高額です。一方、セルフレジは半額以下で導入できる場合が多く、ほぼ同じ運用なので、コストをできるだけ抑えたい場合は、セルフレジのほうがいいでしょう。

クリニック・歯科が自動精算機を導入するメリット
ここでは、クリニック・歯科が自動精算機を導入するメリットを解説していきます。
クリニック・歯科が自動精算機を導入するメリットは以下の8点です。
- 待ち時間の削減
- 人件費削減
- 会計ミスの削減
- スタッフのレジトレーニング時間の削減
- 衛生面の強化
- 海外顧客対応力アップ
- キャッシュレス決済が標準搭載
- 顧客満足度の向上
①待ち時間の削減
病院・クリニックで患者の最大のストレスは待ち時間であり、以前から問題視されてきました。
厚生労働省が行った「平成29年受療行動調査(概数)の概況」によると、外来患者の診察等までの待ち時間は「15分未満」が26.1%でもっとも多く、「15分~30分未満」が23.1%、「30分~1時間未満」が20.4%となっています。
これらを合わせた「待ち時間1時間未満」の割合は69.6%です。
自動精算機では、患者が自ら精算を行うので、待ち時間を削減できます。また、待合室の混雑緩和も期待できるでしょう。
②人件費削減
自動精算機を導入することで受付スタッフが必要なくなります。そのため、レジ業務にあてていた時間を、他の業務にあてることが可能です。
受付スタッフが不要になれば、そのぶんの人件費を削減できます。初期導入費用は多額のコストがかかりますが、長期的に見ると非常に大きな効果が期待できるでしょう。
③会計ミスの削減
自動精算機に会計を任せることができるので、おのずと会計ミスが削減されます。
会計は金銭を取り扱うためプレッシャーがかかるものですが、自動精算機を導入することで心理的負担が軽減され、人材の定着率アップにもつながるでしょう。
また、自動精算機があればレジ業務が不要になるので、求人に対する応募が増え、採用率アップが期待できます。
④スタッフのレジトレーニング時間の削減
自動精算機があれば、スタッフはレジ業務のトレーニングを行う必要がありません。
そのため、教育コストの削減につなげることが可能です。
また、レジ業務という心理的負担がかかる業務がなくなることで、定着率アップにつながります。
現金管理の重要性・マネーストレスの解消は、大きなメリットとなるでしょう。
⑤衛生面の強化
新型コロナウィルスの影響もあり、院内の衛生面を気にする患者は非常に多いです。そのため、クリニック側も細心の注意を払って感染予防を行う必要があります。
自動精算機の場合、人との接触がないため、衛生面を強化することが可能です。自動精算機があるということで来院する患者もいるでしょう。
⑥海外顧客対応力アップ
近年では、外国人の患者も増えていますが、スタッフが英語を理解できない場合、コミュニケーションに多くの時間が取られてしまいます。また、外国人患者の方も、英語に対応してもらえないため来院を避ける可能性もあるでしょう。
多言語対応している自動精算機であれば、外国人の方でもスムーズに会計が行えるため、クリニック側の対応力アップが期待できます。
⑦キャッシュレス決済が標準搭載
自動精算機の中には、現金の他、クレジットカード・電子マネー・QRコード決済などのキャッシュレス決済が標準搭載されているものが多くあります。
そのため、日本人の患者だけではなく、外国人患者の方もスムーズに会計を行うことが可能です。
⑧顧客満足度の向上
自動精算機は、従来の対面での会計方法しか経験してこなかった患者にとって、新しい体験となります。衛生的かつスムーズで、ストレスフリーで会計を行うことが可能です。
また、小児科などの子どもが来院する機会が多いところでは、自動精算機の利用が一つの楽しみになる可能性もあるでしょう。
クリニック・歯科が自動精算機を導入するデメリット
ここでは、クリニック・歯科が自動精算機を導入するデメリットを解説していきます。
クリニック・歯科が自動精算機を導入する際は、以下の4点がデメリットとなるでしょう。
- コストが高い
- 高齢者などサポートが必要な患者さんもいる
- サイズが大きいので院内スペースを圧迫する
- 金銭処理トラブル対応や釣銭補充が大変
①コストが高い
自動精算機の初期費用は、200~450万円です。また、年間保守費用が10~20万円かかります。その他、月額利用料も発生する高額製品です。一方で、人件費削減効果や人材定着効果などのメリットもあるので、メリット・デメリットを比較検討する必要があります。
自動精算機ではなく、セルフレジ導入も視野に
自動精算機の初期費用は200~450万円と非常に高額ですが、レジスタッフが不要になります。一方、セルフレジの初期費用は、100~150万円と自動精算機よりもコストを抑えることが可能です。しかし、最低一人はレジスタッフが必要になります。
導入前は、そもそも自動精算機である必要があるのかを、よく検討するようにしましょう。
セルフレジの場合、電子カルテ・レセプトとデータ連携できない製品がほとんどですが、そもそもデータ連携が必要か?バーコード連携でも良いのではないか?など、本当に必要かどうかを熟考する必要があります。
データ連携・バーコード連携それぞれのメリット・デメリットは以下の通りです。
データ連携
- 誰が・いつ・いくら請求して・いくらお釣りを返して・どんな手段で決済されたかが分かる
- 自費なのか保険なのか・どんな科目で受診したのかが分かる
- 入金済みか未収なのかがわかる
- 中には接続費用はかかるものがある
バーコード連携
- 接続費用が掛からないケースが多い
- 誰がいついくら請求したかなどの詳細なデータを取得できない
- 先に領収書を渡して会計を行うため患者が違和感を感じる場合がある
なお、スマレジであればセルフレジとして100~150万円で導入でき、電子カルテ・レセプトとデータ連携も可能です。
②高齢者などサポートが必要な患者さんもいる
高齢の患者が多いクリニックの場合、自動精算機を初めて利用する患者に対して操作方法を説明しなければならないケースがあります。できるだけ説明に時間を取られないように、導入する際は、画面内の操作説明がわかりやすいものや、モニターが大きい製品を選ぶようにしましょう。
音声ガイダンス機能が搭載されているものもあるので、患者の年齢層に応じて製品を選ぶといいです。
③サイズが大きいので院内スペースを圧迫する
自動精算機は、サイズが大きいので、広い設置スペースが必要です。そのため、設置することで、圧迫感が出てしまう可能性があります。
しかし、小型の自動精算機もあるので安心してください。たとえば、クリニック向けの自動精算機の「FLEXCOM Pay」は、 幅360㎜・奥行250mm・高さ1525mmと、非常にコンパクトな設計になっています。その他、カウンター上に置ける卓上型もあるので、院内のスペースに応じて導入するようにしましょう。
④金銭処理トラブル対応や釣銭補充が大変
自動精算機は、従来のキャッシュドロアーと比べると、開けるのが大変なので少し釣銭補充に時間がかかります。ただし、通常のスタッフに開けられなくなるので、スタッフによるお金の盗難防止効果はあるでしょう。
自動精算機のよくあるトラブル事例
自動精算機では、以下のようなトラブル事例があります。
- 現金詰まり
患者が支払い時に、紙幣や硬貨を詰まらせてしまうと、自動精算機がエラーになり動かなくなります。 自動精算機は、規定の量を超えた現金が一度に投入されると故障につながる可能性があるので、注意が必要です。 - 患者さんが操作方法がわからない、不満をもらす
自動精算機は、基本的にシンプルに操作できるようになっていますが、それでも全員が問題なく使用できるわけではありません。高齢者や従来の会計方法に慣れている方は、使いづらいと感じる可能性もあります。 - 逆両替
近年は、自動精算機での逆両替が問題視されています。逆両替とは、請求金額を大幅に上回る硬貨を大量に投入し、お釣りを紙幣でもらおうとする両替方法のことです。 多くの硬貨が一気に投入されると自動精算機が停止してしまう可能性があるため、そのようなことにならないように、硬貨の大量投入を防止するステッカーを設置するなどの対処が必要でしょう。

まとめ
自動精算機は、人件費削減効果や会計ミスの軽減につながるなど、様々なメリットがあります。一方、 使用方法がわからない患者へのサポートや、金銭処理トラブルは避けることができません。また、高額な初期費用も問題となるでしょう。
導入の際は、コストと機能性を考慮して、本当に自動精算機が必要なのかどうかをよく考えた上で決めるようにしましょう。
検討する際は今回の記事の内容を参考にしてください。
おすすめの自動精算機について、下記の記事で解説しています。導入を検討されている方は是非チェックしてみてください。
